2016年9月6〜7日に開催された(公)化学工学会第48回秋季大会シンポジウム「CVD・ドライプロセス ―構造・機能制御の反応工学―」(当分科会主催)にて発表された24件の講演から,優秀な発表をされた下記2名の若手研究者の方に,CVD反応分科会奨励賞を授与することを決定致しました。本奨励賞の規約につきましては,こちらをご参照ください。
化学工学会反応工学部会CVD反応分科会
平成28年度 奨励賞
学生奨励賞
永井 款也(早稲田大学) 「再利用サファイア基板上へのCuの急速エピタキシーとCVDによるグラフェンの精密合成」
選定理由:グラフェンは優れた物性・機能を有す原子層材料として注目されるが,その広範な利用には良質なグラフェンの安価な合成が鍵である。永井氏は,エピタキシャル銅触媒を用いた化学気相成長(CVD)法に取り組んだ。真空蒸着の際,蒸着源の銅を1700℃以上と融点より600℃以上高温に加熱し蒸気圧を高め,10-30 sで1-3 μmと高速なエピタキシーを400℃のサファイアc面上にて実現した。メタンを原料に単層ないし二層のグラフェンの均一成長をCVDで実現,グラフェンを酸化膜付きSi基板に転写,サファイア基板の5-6回の再利用を簡易な表面処理で実現した。エピタキシーでは高真空・清浄環境での低速製膜が常識だが,高温では構造緩和が速いとの思想により高速製膜と基板再利用を実現したことは,学術・実用の両面で価値が高い。反応工学・薄膜プロセスの先端材料への展開に重要な貢献が期待され,CVD反応分科会奨励賞に相応しいと判断し,学生奨励賞を授与する。
学生奨励賞
青井 慈喜(早稲田大学) 「Si-Cu/カーボンナノチューブ/Cu複合電極の急速蒸着とリチウム二次電池負極応用」
選定理由:低炭素社会の実現に向けリチウム二次電池への期待は大きい。黒鉛負極の10倍の理論容量を持つシリコンは特に注目され,充放電時の体積変化による劣化を防ぐべく各種ナノ構造体が開発されてきたが,実用には低コスト原料から高速に厚い電極を作る必要がある。青井氏は,厚さ数十μmのカーボンナノチューブ(CNT)垂直配向膜を1 minで合成,その上に厚さ数μmのCu膜を1 minで蒸着,基板から分離してCNT壁状構造体が一部Cu膜に埋め込まれた三次元集電体を作製した。さらにCNT上に厚さ数μmのSi-Cu合金膜を1 minで蒸着し,多孔質なSi-Cu/CNT/Cu負極を実現した。質量・体積・面積あたりの高い初期容量を確認,サイクル特性の向上を図っている。安価な原料と高速プロセスで自己組織的に三次元構造体を実現し,反応工学・薄膜プロセスの新展開および二次電池の革新に重要な貢献が期待される。CVD反応分科会奨励賞に相応しいと判断し,学生奨励賞を授与する。
奨励賞トップ
|
|
|